令和4年度 学校教育プラン
PDF版はこちらをクリックしてください。

令和4年度 秋田県立視覚支援学校教育プラン
Ⅰ 学校の現状と課題 ・ 学校を取り巻く将来の状況の予測
1 学校の現状と課題
本校の在籍数は平成17年度以降、30名前後で増減を繰り返しながら推移し現在に至っている。近年、幼稚部や小学部への入学者は微増しているが、理療科関連の学科の在籍数は減少傾向にある。また、障害の状態は一人一人異なり、他障害との重複も見られる。このことから、個の教育的ニーズやキャリア発達に即した教育の充実が課題である。
幼稚園・保育所・認定こども園等、小学校、中学校、高等学校への支援については、弱視学級在籍者や教育相談対象者である幼児児童生徒、その所属学級担任や保護者等を中心に継続的な支援を行っている。また、視覚障害理解を目的とした出前授業や体験学習の実施を要請する教育機関が増加している。今後、インクルーシブ教育システムの推進、相談対象者の進学等に伴い、更なる連携の拡大・充実が課題となる。
早期教育については「よつば教室」、成人への支援については「あいサポート教室」を実施し、教育相談や視覚障害リハビリテーションに係る指導を行っている。また、平成29年度より、本校が事務局となり関係機関と連携して秋田県版スマートサイト(視覚障害に係る相談先等の情報を掲載したリーフレットを配付することで、当事者が必要な支援を受けることができる機関に接続しやすくするシステム)の運用を開始した。今後、医療・労働・福祉・教育等の関係機関と連携した取組の発展を目指すとともに、視覚支援学校やロービジョン支援センターの理解・啓発を一層進める必要がある。
2 学校を取り巻く将来の状況の予測
全国の視覚支援学校に在籍する幼児児童生徒数は平成27年度に3,000人を割り、10年間で1,000人減少している。これは、人口減少、医学の進歩、視覚補助機器の発達等によるものと推察され、今後も視覚支援学校の在籍数は減少することが予測される。また、全国の身体障害者手帳を所持する視覚障害者数は約31万人(平成23年度 厚生労働省)、秋田県では2,956人(令和2年3月末 秋田県)と報告されている。その内、60歳以上が86%を占めており、高齢化に伴い中途視覚障害者数が増加することが予想される。これに、本人や家族が気付かない等の潜在的な視覚障害者を加えると、その数はさらに多くなると考えられる。
社会状況については、あん摩マッサージ指圧師、はり師、きゅう師等に関する法律第19条に係る問題や、リラクゼーション業(総務省 日本標準産業分類)の増加による就労の場の変容、障害者雇用の促進などの変化が見られ、その対応が求められている。
このような状況の中、困難を抱える乳幼児から成人までの視覚障害者を支援し、ADLやQOLの向上を含め個の自己実現と社会自立を支える使命を本校は担っている。
Ⅱ 目指す方向性 ・ 学校像や幼児児童生徒の姿
1 教育目標
視覚に障害のある幼児児童生徒に、その発達段階に応じた教育を行い、視覚障害の状態を改善し克服するために必要な知識、技能を習得し、社会参加に向けて自立できる人間を育成する。
2 教育方針
教育目標の実現のために、明るく楽しく規律ある学校の実現をめざし、地域や関係諸機関と連携し、開かれた学校づくりを推進する。そのために、教職員の専門性の向上に努め、幼児児童生徒とのふれ合いを大切にし、次の事項の充実を図る。
○幼児児童生徒の自主的、創造的活動を尊重し、自らを表現する力を育む。
○幼児児童生徒が、豊かな人間性と広い視野をもつための資質を育む。
○幼児児童生徒が、様々な困難を克服し社会参加に向けて、自立する力と感謝する心を育む。
Ⅲ 具体的な目標 ・ 取組 ・ 推進指標
少人数や多様な障害状況に対応した教育の充実
〈目標〉
視知覚の状態など個別の実態を的確に把握、「個別の支援計画」「個別の指導計画」に反映して具体的な指導計画を立案し、職員が連携して幼児児童生徒の教育的ニーズに即した教育を行い、自立と社会参加を目指したキャリア発達を支える。
〈取組〉
・教科指導や合わせた指導の充実による、確実な学習の積み重ね。
・「P(Plan)の会」「CA(Check-Action)の会」「CA・P(Check-Action・Plan)の会」による多面的な実態把握と確実な計画立案・評価、職員間の情報共有(「コアプロブレム(自立活動)」の運用)。
・基礎的な知識と実践的施術技術をつなぐ効果的な学習による「あはき師」の育成。
〈推進指標〉
・指導や生活指導における育成したい資質・能力の明確化による目標設定、評価及び「核になる体験」を重視した授業実践とグループ研究を推進する。
・「Pの会」「CAの会」「CA・Pの会」を、視能訓練士(ORT)や点字指導員、歩行指導員を加えて実施する。
乳幼児から成人までの視覚障害者への支援の充実
〈目標〉
視覚支援学校及びロービジョン支援センターの理解促進を図り、よつば教室、サテライト教室、あいサポート教室を通して、視覚障害児者とその家族、関係者が必要とする支援を行い、全県に居住する視覚障害者の自立と社会参加を支える。
〈取組〉
・視覚に配慮が必要な乳幼児及び児童生徒への関係機関と連携した効果的な支援。
・医療、労働、福祉、教育の連携による秋田県版スマートサイトの効果的な運用。
・本校の教育活動や相談・支援機能に関する効果的な広報による県民の理解啓発と情報を必要とする人に向けた確実な情報発信。
〈推進指標〉
・ロービジョン支援センターの組織改編による合理的で効果的な相談支援を提供する(ICTを活用したリモート相談支援、ホームページの見直し等)。
・スマートサイト推進委員会の継続開催並びに各関係機関窓口への訪問を実施する。
・リーフレット配付・説明等の広報活動を工夫し、相談者数を年間40人程度とする。
視覚障害教育に係る専門性の向上と継承
〈目標〉
視覚障害に係るアセスメント、自立活動や視覚障害リハビリテーションに係る指導等における職員の専門性の向上と継承に取り組み、個別の教育的ニーズに即した教育を継続して行う堅固な基礎を作る。
〈取組〉
・全職員が自立活動、視覚障害リハビリテーション及びアセスメントに関する知識 や技術を活用して授業を行う力の育成並びに学校組織としての専門性の継承。
〈推進指標〉
・「育成したい資質・能力の育成を目指した授業実践とグループ研究を推進し、授業改善につなげる。
・ICTを活用した授業及び研修会等を推進・充実する。
・教員が視覚障害教育の基本的知識や技術を十分に身に付けることができるように、新任者を中心とした基礎研修を年20回開催する。
・職員個々でニーズに応じた自由研修を計画・実施する。
地域や関係機関との連携の拡大
〈目標〉
学校があるかがやきの丘や上北手地区を始め、秋田県全域における連携拡大を 図る。また、社会とつながりのある教育活動を展開することで、幼児児童生徒の 自立と社会参加を支えるとともに、視覚障害への理解啓発を促進する。
〈取組〉
・計画的な交流及び共同学習や貢献活動等による学びのある学習の場の設定と社会とのつながりの拡大・深化。
・就労の場における視覚障害者への理解促進、新たな就労の場の開拓。
〈推進指標〉
・小学部から高等部専攻科までの全ての学級で交流活動、交流及び共同学習を実施する(ICTを活用した授業及び交流活動の実践)。
・小・中学部への進路指導情報の提供、及び中学部段階での職場体験を実施する。
・進路学習・現場実習等協力事業所15か所を維持し、5か所を新規開拓する。