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クローバー4号(10月9日)

 クローバー 第4号

秋田県立視覚支援学校
ロービジョン支援センター
令和2年10月9日発行
 
中途で見えにくくなった方が困ること
ロービジョン支援センターでは0歳からの相談を受け入れている中で、成人の方の相談も多くあります。今回、平成27年度からの5年間に初めて相談にいらした66名の成人の相談記録を見直し、中途で見えにくくなった方がどのようなことに困っているのかを考えてみました。
※ 円グラフ1:主な相談内容。多い順に日常生活全般、読み書き、入学相談、歩行・白杖、情報がほしい、将来が心配、コンピュータ操作、就労、音声機器、羞明。
 具体的な困りごとで最も多いのは『読み書き』の15名でした。その15名を分析してみると、
 見えにくくなった原因疾患  多くは、黄斑変性や緑内障により中心視野が欠けた人で、読み書きには中心視野が重要であることが分かります。
※ 円グラフ2:原因疾患。多い順に黄斑変性、緑内障、糖尿病網膜症、角膜疾患、網膜色素変性症、その他網脈絡膜疾患。
 良い方の眼の視力  新聞の文字を読むには近方視力が0.4程度必要と言われていますので、0.3以下の方が多いのは当然ですが、0.5~0.8の方もいます。この方たちは、歪みや、中心付近の視野に異常を感じて読みづらかったり、悪い方の目が利き目であったりします。
※ 円グラフ3:良い方の目の視力。多い順に0.07~0.1、0.2~0.3、0.5~0.8
 年代  70代以上が2/3、80代以上が1/3を占めています。読み書きに意欲のある高齢の方が多いことに驚きますが、逆に言うと、意欲や生きがいをなくさないために、読み書きの支援が必要なのだと思います。
※ 円グラフ4:年代。40代、50代、60代、70代、80代、90代。
次いで多いのは『入学相談』。既に本校の情報を得て入学を考えていらした方々です。別の困りごとで相談に訪れ、本校専攻科の存在を初めて知って、その後入学に至ったケースもありました。
3番目は『歩行・白杖』。視力が良くても、視野が極端に狭くなると、周囲の状況がわからなかったり物を探せなくなったりすることから、外出できず引きこもってしまうこともあります。御本人が安全な歩き方や白杖の使い方を習うことに限らず、一緒に歩く御家族も、ガイドの仕方を知ることで楽になっているようです。
その他、少数ですが『情報がほしい』という相談があります。支援機器や福祉について知りたいという方に混じって、「見えない人がどんなふうに過ごしているのか知りたい」という方がいました。見えなくなって何もできず、途方に暮れている姿が目に浮かびます。見えなくてもできることや楽しめることがたくさんあります。「困った」「知りたい」…何でもいいので声を上げてほしいと思います。周囲の方もその小さな声を拾って、ロービジョン支援センターにお繋ぎください。
(文責:田中敦子)
 
理療科について
「理療」という言葉をご存知ですか。「理療」とは、あん摩マッサージ指圧、鍼(はり)、灸(きゅう)によって体調を整えたり、病状を改善したりする医療行為の総称です。また、「あん摩マッサージ指圧」「鍼(はり)」「灸(きゅう)」の頭文字をとって「あはき」とも呼ばれます。この「あはき」を行う理療師(あはき師)は国家資格になっています。「あはき」は視覚に障害のある方が昔から従事してきた仕事でもあります。今回は「理療」について学ぶことができる本校の専攻科理療科について取り上げます。
本校の専攻科理療科・専攻科保健理療科・本科保健理療科へは、このような志をもった方が入学します。それでは、理療科で学ぶ内容と入学後の流れを紹介します。
※ さし絵:机に向かっている男性のイラスト、ベットに横になっている人を施術している女性。「人に喜ばれる理療師になりたい。」「体の痛みに悩んでいる人に施術をして、元気になってもらいたい。」の吹き出しが付いている。
 『学習内容』
① 解剖学・生理学
体の構造や機能について学習します。
② 臨床医学
病気の概要や治療法などについて学習します。
③ 経穴・東洋医学
経穴(ツボ)の名前や場所、東洋医学特有の考え方や病気の診方について学習します。
④ 理療基礎実習
あん摩、鍼、灸の実技を練習します。
⑤ 臨床実習
校外の患者に施術し、実践的な実技を行います。
※このほかにも、衛生学やリハビリテーション医学、東洋医学臨床論など専門的な内容を学習します。
 【入学から免許取得までの流れ:本校の場合】 
1.「コースの選択」
2.「3年間の就業」
※本校では、国家試験受験資格を取得できます。
3.「あはき国家試験の受験」
4.「試験の合格」
5.「あはき免許の取得」
あはき師となった卒業生は、開業(治療院)、老人保健施設、訪問マッサージ、ヘルスキーパーなど様々な所で活躍しています。卒業生からは、「大変な仕事ですが、患者さんやお客さんからの感謝の言葉にやりがいを感じます」との声が挙がっています。「理療」は、これからさらに社会に求められる仕事です。
(文責:水谷亨)
 
視覚支援学校卒業後の進路について
秋田県立視覚支援学校高等部には、高等部普通科と高等部保健理療科、専攻科理療科、専攻科保健理療科、専攻科生活情報科があります。高等部普通科と高等部保健理療科は、中学校(中学部)を卒業した生徒が入学の対象となります。専攻科理療科と専攻科保健理療科については、高等学校(高等部)を卒業した生徒が対象です。理療科と保健理療科の学習内容については、前頁のとおりです。ここでは、過去5年間の高等部卒業生の進路について紹介します。
 ※ 表1:○高等部普通科。単位は人
H27年度、在籍数1、進学1、
H28年度、在籍数2、福祉就労1、生活介護1 
H29年度、在籍数2、進学1、一般就労1
H30年度、在籍数2、福祉就労2  
H31年度、在籍数1、生活介護1 
進学先・就労先
筑波大学附属視覚特別支援学校 1
本校専攻科 1
障害者支援施設 1
就労継続支援B型施設利用 3
生活介護施設利用 2
 ※ 表2:○専攻科理療科
H27年度、 在籍数6、進学2、開業1、一般就労2、在宅1
H28年度、 在籍数1、進学1 
H29年度、 在籍数4、開業1、一般就労3 
H30年度、 在籍数3、開業1、一般就労2 
H31年度、 在籍数0   
進学先・就労先
筑波大学理療科教員養成施設 2
福岡高等視覚特別支援学校 1
訪問マッサージ 6
ヘルスキーパー 1
開業 3 
在宅 1
 ※ 表3:○専攻科保健理療科
H27年度、在籍数1、一般就労1
H28年度、在籍数0
H29年度、在籍数1、在宅1
H30年度、在籍数2、一般就労2
H31年度、在籍数1、一般就労1
就労先
訪問マッサージ 3
老人保健施設 1
在宅 1
 ※ 表4:○高等部保健理療科
H26年度、 在籍数1、開業1 
H27年度、 在籍数1、在宅1
H28年度以降在籍なし
 ※ 表5:○専攻科生活情報科
H27年度、 在籍数2、在宅2
H28年度、 在籍数1、福祉就労1 
H29年度、 在籍数2、一般就労1、福祉就労1
H30年度、 在籍数1、 在宅1
H31年度、 在籍数1、進学1  進学先・就労先
本校理療科 1
訪問マッサージ 1
就労継続支援B型施設利用 2
在宅 3
本校では、本人や保護者、家族等のニーズを把握し、進路の実現に向けて学習や実習を重ねます。進学先では、理療に関してさらに専門的に学んだり、教員免許の取得を目指したりします。卒業後は、本校職員がそれぞれの進学先、就労先で活躍する卒業生の追指導を行います。
(文責:今井理)
 
教科等学習の工夫~機器の紹介~
学習を効果的に進めるための機器があります。それらを使い、より見えやすく、できることが増えることで、「もっと自分でやってみたい」という主体的に学習する場面が増えていくことが期待できます。活用例と共にご紹介します。
拡大読書器
文字を読みたいという方には、持ち運びに便利なルーペを紹介しますが、ルーペでも見えにくい方の場合は、拡大読書器を紹介しています。
拡大読書器は、見たいもの(文字・画像等)をモニターに写し、拡大して表示する機器で、印刷物の文字などを自分の見え方に合わせてカスタマイズして表示でき本校でも多く活用されています。モニターの下にあるテーブルに本などを置き、前後左右に動かしながら見たい場所を映して使用します。普通文字を見ることが難しかった人も、コントラストを高くして見える大きさまで拡大し、まぶしければ黒背景を白文字(右写真)と色を反転して、教科書を読んだり書き込んだりして学習しており、一人一人の見やすさに対応可能です。本校では、拡大読書器で、教科等の時間に教科書やプリントを読む、書く、特活(集会等)で原稿を読む、作業学習の時間に材料の選別をする、等の場面で活用しています。
※ 写真:拡大読書器
デイジー・プレクストーク
デイジー(Digital Accessible Information System)とは、視覚障害等により一般的な印刷物を読むことが難しい方々のために開発されたデジタル録音図書です。1枚のCDに約50巻分の録音が可能と言われています。
プレクストークは視覚障害者用ポータブルレコーダーで、デイジー専用の再生機です。録音図書を再生したり、また、機種によっては録音したり、CDを聴くこともできる機器です。目次や索引から目的のページへ移動したり、しおりを付けたりすることもできるので、どこまで読んだかが分かり便利です。本校では、「情報」の時間にその操作方法を学び実際に読書をする等、将来の豊かな生活にむけて活用をしています。また、読書だけではなく、録音機能を利用して、授業の内容を録音するという活用もあります。
※ 写真:デイジー・プレクストーク
(文責:仲澤美香子)
御相談のお問い合わせは
    秋田県立視覚支援学校 ロービジョン支援センターへ御連絡ください。
  相談支援担当  長崎雪子・坂本由起子・渡部麗子・銭谷寿・佐藤友紀子
  〒010-1409 秋田県秋田市南ケ丘一丁目1番1号
TEL 018-889-8571
FAX 018-889-8575
 
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