見えにくい幼児の生活動作の習得について
みなさんの周りにいる見えにくいお子さんは、自分で着替えたり、菓子袋を開けたり、紙パックのストローを差したりできますか。
見えにくい子どもは、身の回りのことが自然にはなかなかできるようになりません。それは、周囲の大人や友達の様子を見て模倣する“見よう見まね”ができないからです。できるようになるためには、それが何か(意味)、どのような仕組みか(構造)が「分かる」ことと、繰り返し試行錯誤できる環境が必要です。
本校では、仕組みが分かるように見やすく操作しやすい模型を使ったり、大きく拡大して見せたりして、子ども自身の「見えた」「分かった」を引き出し、できたことを実感できるような支援をしています。
<例:紙パックについているストローの取り出し>
①仕組みが分かるように、ストローの巨大な模型を使用します。
②幼児「 先生が押したら、袋からストローが出てきたよ。先がとがっている方が出てきた!とがっている方の反対を押せば出てくるんだ!やってみたい!」
③幼児「 やり方が分かったら楽しくなって、家でも練習したよ!」「 一人でできるってうれしいな!」
ものの仕組みや意味が分かると、力任せや、やみくもな方法ではなく、見たり触ったりして確かめて行動することができます。
一つ分かると、「これは○○と同じだ!」「これは△△が違う!」という気付きからできることが増えていきます。ものの特徴を捉える目や手を育てるには、早期からの支援が大切です。(文責:神 美穂子)
私(弱視)の見え方について
私は、黄斑ジストロフィーという病気で、めがねなどで矯正しても視力は0.07です。視野の中心が見えにくく(中心暗点と言います)、明るい場所ではとてもまぶしく感じます。どんな見え方なのかを具体的に紹介します。
1 お札の識別が苦手
遠くのものがぼやけて見えますが、人や物のシルエットは分かります。椅子、机など比較的大きなものであれば、5m程度離れていてもおおよそ把握することはできます。白い床に白い机などは、1mくらい近づいても分からないこともありますが、白地に黒など、コントラストがはっきりしていると、比較的遠くからでも把握しやすいです。
2 人の顔が見えない
中心暗点のため、見ようとした部分が消えて見えます。例えば、相手の顔を見ようとすると顔が消えて見えます。文字も同じで、見ようとした文字が消えて見えます。確認するためには、近付くか拡大する必要があります。文字であれば、10cmまで近付いて見たり、ルーペを使って拡大したりして見ます。人の場合は、相手が誰であるのかを、状況(いつも座っている席など)やシルエット、声などで判断します。相手と相手の名前を一致させるのには、時間がかかります。
3 明るい場所での状況把握が苦手
晴天の外出時は、まぶしさで周囲が真っ白になってしまい、周りの状況の確認が難しくなるため、外出時は遮光眼鏡を装着します。遮光眼鏡はある程度の光を遮ってくれるので、光の強い環境でも周囲の状況を確認する事ができます。
4 よく迷う
慣れている場所であれば道も覚えており、障害物もおおよそ把握することができるので、歩いて移動することは可能です。店の看板や標識などはしっかり確認できないので、初めて行く場所ではよく迷いますが、ランドマークになるものをいくつか覚えることができれば迷わなくなります。
5 枠の中に文字を書くのが苦手
文字を書くことはできますが、ペン先の確認が十分にできません。決められた大きさの枠に文字を書こうとすると、枠も文字も見ないで書くことになり、文字が枠からはみ出してしまいます。しかし、拡大読書器を使うとしっかりと枠の中に書くことができます。拡大読書器が使えない場合でも、自分の指で書くエリアを確認すれば、ある程度うまく書くことができます。
視野の中心部分が見えない事で細かいものは見えづらくなりますが、ルーペや単眼鏡、拡大読書器等を使って対象物を大きくすることで確認する事ができます。また、まぶしさのある環境でも、遮光眼鏡を使うことで周囲の状況が確認しやすくなります。自分の見え方を周囲に伝えることで、見え方に合わせた工夫をしたり支援をいただいたりして、より良い生活につながると思います。(文責:河嶋 真)
弱視の方の見え方は人によってさまざまです。一人ひとりの見え方に合った支援を心がけたいものです。
視覚障害者が旅行するときの工夫
私はブラインドテニスというスポーツの魅力にとりつかれ、全国各地で開催される大会へ数多く出かけています。その際に役立っていることなどをご紹介します。
(1)各種割引
身体障害者手帳を提示すると交通機関や見学先での入場料や拝観料などの割引が受けられます。
(2)事前検索
JRなどでは指定席まで乗車時に案内してくれますが、席を立ってしまうと自分の席がわからなくなってしまいます。乗車する電車の指定席車両の座席の配列を予め知っておくために、シートマップを確認し出入り口やトイレなどの位置関係を確認しています。
また、利用施設のフロアマップや各種サービス、飲食店の公式HPからメニューを確認することで、自分一人で動いたり注文できることと、人にお願いすることを整理しています。
その他、スマホやタブレットのアプリを活用して・・・
①乗り換え情報では交通機関の運行状況や出発・到着の時刻だけでなく、乗り降りのホームの情報、運賃も表示されるので事前に準備ができます。
②地図アプリを使って地理情報を事前に調べたり、道案内機能を使います。しかし立体的な地理情報に関しては案内情報が不足している時もあり、迷うこともあります。
(3)援助依頼
①乗り換え:各種交通機関では出発から到着まで(経由駅なども)の付き添いを事前にお願いしておきます。
②フロント:宿泊先のホテルで必ず行うことは、フロアマップの確認と部屋の情報をチェックすることです。部屋の出入口から壁伝いに、照明のスイッチ、家具の配置やテレビ・電気ポットなどの場所を確認します。テレビの操作やトイレの流水スイッチの場所、シャンプー・リンスなどの判断ができない場合には早めにフロントに問い合わせて教えてもらいます。
(4)その他
片手に白杖を持っていると荷物を持ち運ぶのが大変な時もあります。その際には宅配便の往復サービスを利用し、事前に宿泊先へ荷物を送付します。
工夫次第で楽しい旅行ができます。(文責:小松 由佳)
便利グッズ紹介
①IHクッキングヒーター
操作に音声ガイドと操作音が付いたタッチ式のIH調理器です。フラットな操作部に付属のわくわく用具ショップオリジナル“IHクッキングヒーター用操作ガイドカバー”を装着すれば、見えない・見えにくい方でも楽に操作していただけます。加熱調理、あげもの調理、カレー・煮物のワンタッチキーがあり、7段階の火力、温度調整、タイマー機能で本格的な調理を目指せる電磁調理器です。
②カッチン安全つめきり
持ち手は小さなはさみの形で、はさみの刃の部分はキャラメル大になっており、その中央部に爪を入れて切ります。全体は電車の切符ばさみのイメージです。
お問い合せは 社会福祉法人 日本点字図書館 電話03‐3209‐0241(代表)
大活字本を知っていますか?
昨年、視覚障害者情報総合ネットワーク「サピエ」での点字図書と音声図書の利用について紹介しました。最近は電子図書もありますので、弱視の方の読書環境は整ってきていますが、やはり紙の本で読みたいという方には「大活字本」がおすすめです。大活字本は12ポイント~22ポイント程度の見やすい字体で書かれています。文字が大きいため、通常の1タイトルが分冊になっていることが多く、値段も割高です。
本校の図書室には、寄贈されたものや購入したものが300冊ほどあり、見えにくさから読書嫌いになりがちな児童生徒の読書に一役買っています。また、見えにくい人だけでなく、高齢者にも見やすいと好評です。秋田県立図書館には2千冊以上の大活字があります。遠方の方には宅配での貸し出しもあるので、利用してみてはいかがでしょうか。
御相談のお問い合わせは
相談支援担当 長崎雪子・渡部麗子・銭谷寿・佐藤友紀子
秋田県立視覚支援学校 ロービジョン支援センターへ御連絡ください。
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