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クローバー5号(1月26日)

「見えない・見えにくい子どもの美術教育」
ロービジョン支援センター 副センター長 長崎雪子
 「見えないと絵を描くことは難しいでしょう?」「視覚支援学校では、美術の勉強は、どのように行っているのですか?」
 時折、このような質問を受けます。確かに、弱視児や盲児にとって、絵画などの平面作品の制作は、困難を感じる分野かもしれません。それは、対象を視覚で観察することに重きを置いて、描画しているからだと思います。その結果、対象のとおりにうまく描くことができず、描くことに苦手意識を感じ、美術に対しても「あまり好きではない」という思いをもっている児童生徒がいるようです。
 美術は、一般的には見ることを基本にした「視覚芸術」ともいわれる分野であり、絵画・工作・デザイン・彫刻・鑑賞などの領域があります。どの領域も、視覚により観察する力が求められますが、視覚支援学校では、視覚だけでなく、触覚・聴覚・嗅覚等の五感を活用して観察することを大切にしています。視覚で十分に観察できなくても、触覚等の感覚で細部にわたって観察するということです。
 美術の授業で、「粘土でスケッチ」という題材をよく取り上げます。スケッチというとモデルを見て、画用紙にモデルそっくりに描くことを想像されると思いますが、粘土でスケッチは画用紙ではなく粘土で表現します。粘土の塊とモデルとなる野菜や果物を並べ、よく見て、触って、粘土を形作っていきます。制作前には、モデルを「? BOX」に入れて、触感だけで形や大きさ、質感の特徴を自分の言葉で説明するという時間も設けています。この活動を通して、生徒には、ある対象に触れて感じたことを自分の言葉で表現する力が身に付いてきているように感じます。「粘土でスケッチ」は、一例ですが、それ以外にも、版画(コラグラフ、スチレン、木等)、立体工作(段ボール、発泡スチロール)、空間構成(発泡スチロール、針金)など、触覚や聴覚等も活用することで、見えにくくても楽しんで表現活動することができる題材はいくつもあります。
 見え方や年齢にかかわらず、表現することを楽しみ、様々な芸術作品の面白さや美しさを味わうことができるようにしていくことが、美術教育の目指す姿だと思います。

 

~雪道での歩行~
生活訓練等指導員 佐藤友紀子
 雪道歩行は、環境が一定ではなく、既得の歩行技術を発揮しにくいため、次のいずれかを考えるのが基本です。
①家族、友人、知人、ボランティア等によるガイド歩行
②援助依頼をしてのひとり歩き
①はルートのすべてをガイド歩行で移動すること、これが安全を確保する第一の手段です。
②は降雪による環境変化を想定し、必要に応じて援助依頼をして目的地まで移動することです。
◆ 雪道歩行の留意点
【白杖】石突きが雪に刺さるのを防ぐアタッチメントを装着する。(スノーチップなど)スライド法による雪壁の伝い歩きをする。
【手袋】白杖から伝わる感覚が分かるように、薄くて防寒性のあるものがよい。
【靴】靴底に滑り止めが付いているものがよい。着脱可能で収納可能なものもある。
【服装】雪により白杖が目立たなくなるため、車の運転手から発見されやすい目立つ服装を心掛ける。
【帽子】環境音が聞き取れるように、いつでも外せる状態にするか、耳を遮らない防水タイプがよい。一般的に、降雪時は未降雪時より音が小さく感じられる。
 また、気象や道路状況にかかわる情報を入手し、状況に応じてひとり歩き・ガイド歩行・公共の交通手段の利用などから適切に移動手段を選択できる力も必要になります。

~援助依頼の意義~
 道に迷ったときや初めての場所を歩くとき、危険だと思ったときなどは、安全を確保するために、無理な行動をせず、他者にたずねたり、ガイド歩行を受けたりすることが大切です。他者に援助依頼して歩行することは、その人の行動範囲を広げ、歩行能力を高めることにつながります。
◆ 依頼のために言葉かけをする際の留意点
 援助してくれそうな人を見付け、能率的に依頼するために、次のような方法があります。
①足音や話し声等を手がかりにしてタイミングよく依頼する。
②電車内、券売機など相手が静止しているときに依頼する。
③駅員、職員等関係者に依頼する。
④デパートなどでは、インフォメーションコーナーを利用する。
 また、依頼するときには、社会性を身に付けていることも求められます。例えば、援助してほしいことを明確に相手に伝える、相手の方を向いて依頼する、感謝を忘れずに伝える、相手の申し出を断る際は、丁寧に断るなどです。そして、援助を受けやすい服装や身だしなみについても気を配りましょう。
 ガイドを受ける際、腕や白杖を引っ張ったり、背中を押されたりした場合には「すみません、肘を持たせてください」などと適切な方法を伝えるようにします。
〈参考文献:見えない・見えにくい子供のための歩行指導Q&A〉

 

視覚障害と調理
~一人分の便利な材料で料理しませんか?~
 材料の計量が難しくても、便利な一人分の材料、調味料があります。今回は、その材料、調味料を使ったメニューを紹介します。
〔鮭フレーク 30グラム〕
・使い切ることができて無駄になりません。
・レシピの例○チャーハン○おにぎり○パスタ○卵焼きなど
〔バター 8グラム〕
・個包装になっており、そのまま使えて便利です。
・レシピの例○鮭のちゃんちゃん焼き○パスタ
〔乾燥ねぎ 0,2グラム〕
・やくみとして様々な料理に使えます。
・レシピの例○うどんやそば○ラーメン○スープ
〔ポーションタイプすき焼きのたれ〕
・レシピの例○すき焼き○かぼちゃのそぼろあんかけ○牛丼

 

理療科・保健理療科の紹介
 本校高等部に設けられている職業課程で、あん摩マッサージ指圧師、はり師、きゅう師を養成する学科があります。今回は、その理療科・保健理療科についてご紹介します。
Qどんな生徒が在籍しているんですか?
 普通科の卒業生が進学することもありますが、社会人の方が目の病気を発症し、その後に入学する方も多いです。中途視覚障害の方の割合は8割以上にのぼります。現在、20代から60代の方が在籍しています。
Q何の勉強をしているんですか?
 理療科・保健理療科では、「あん摩マッサージ指圧、はり、きゅう(以下、あはき)」について学びます。「あはき」に関する知識や技術はもちろんのこと、視覚障害に関する工夫など自立に必要なことを学ぶことで、就労、社会参加につながります。また、学習面では身体の構造や機能から現代医学的な病気から東洋医学まで専門的なことを学びます。さらに、地域の方に施術する実習もあり、技能向上を目指しています。
Q見えない・見えにくいので、勉強は大変ですか。
 視覚障害からくる不便さを解消するための工夫をしながら学習しています。本校には、視覚に障害のある教員もおり、自分の経験から具体的なアドバイスをしてくれたり、親身になって相談にのってくれる頼もしい先輩でもあります。
Q入学すれば免許が取れるんですか?
 学習内容は、身体の構造や現代医学的な病気から東洋医学まで、多岐にわたる専門的なもので、生徒の皆さんは一生懸命に勉強しています。国家試験の受験資格を得るため、理論と実技の学習を3年間受け、単位を取得します。そして、毎年 2月に行われる国家試験に合格すると、「あん摩マッサージ指圧師」免許、「はり師」免許、「きゅう師」免許を取得できます。
 「あん摩マッサージ指圧師」「はり師」「きゅう師」は、厚生労働省より認められる国家資格です。各資格の取得者は、その資格に応じてあん摩マッサージ指圧、はり、きゅうによる施術を行うことができます。また、医師による同意書があれば医療保険が適用されます。

 

御相談のお問い合わせは
秋田県立視覚支援学校ロービジョン支援センターへ御連絡ください。
相談支援担当 菊地雄平・長崎雪子・渡部麗子・佐藤加奈子・佐藤友紀子
 

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