見えにくい状態には「ピンぼけ」(ピントのずれた写真状態)と「解像度不足」(画質の悪い写真状態)がありますが、今回と次回の2回に分けて「ピンぼけ」のお話をします。
私たちの目には強い虫メガネのような凸(とつ)レンズが組み込まれており、光を屈折させて(曲げて)います。力を入れずに遠くを見た時に、曲げられた光がちょうど網膜(カメラのフィルムにあたる)に焦点を結んでいる状態が正視(せいし)で、網膜に焦点が合わないのが屈折異常です。屈折異常には、近視、遠視、乱視があります。
<屈折異常① 近視>
近視は、目に組み込まれたレンズの度数が強すぎる、またはレンズの度の割に眼球の奥行きが長すぎるために焦点が合わない目です。遠くはボケボケになり、裸眼視力の悪い目ですが、近づけばピントが合います。遠くにもピントが合うようにするには、凹(おう)レンズで矯正します。メガネをかけて目が小さく見えている人が近視です。日本人の6~7割が近視だと言われています。
<屈折異常② 遠視>
遠視は、近視と反対に目のレンズの度数が弱すぎる、またはレンズの度の割に眼球の奥行きが短すぎるために焦点が合わない目です。遠視は目に力を入れなければ遠くにも近くにもピントが合いません。軽度で、目に力を入れ続ければ視力良好ですが、疲れます。“力”はだんだん弱くなるので、負担は年々大きくなります。強度だったり、片目だけの遠視だった場合は、その目はどこにもピントが合わないため、視力が発達せずに弱視となる可能性があります。また、内斜視の原因にもなります。視力の発達は6歳くらいまでなので、弱視は早期に見つける必要があり、3歳児健診がとても重要です。「遠視は遠くが見える目」と誤解されがちですが、実際には遠くの視力も良くないか、良くても疲れる目なのです。「視力は良い」と思われている方の中にも、「隠れ遠視」はいますよ。遠視は凸(とつ)レンズで矯正します。凸レンズを通すとものが大きく見えます。
次回は、もう一つの屈折異常の「乱視」と、調節異常の「老視」のお話をします。